どんぐり未来塾は患者さんを副作用から守るために、
「副作用機序別分類」を広める活動をしています
佐藤先生: よろしくおねがいします。私は宮城県内で薬剤師として働きつつ、NPO法人『どんぐり未来塾』という薬剤師の有志団体の代表をやっています。勤務先の薬局は、実家の3軒隣りという近さで、まさに、地域密着型の薬局です。
小さい頃から知っている、近所のおじさんやおばさんが来たり、気づけばうちの親が待合室に座っていたり(笑)、アットホームな環境で働いてます。
もともと「副作用機序別分類」は、前身であるどんぐり工房代表の菅野彊先生が提唱されていたもので、私達はこれを勉強し現場で活用することによって、薬剤師の仕事がすごく楽しくなりました。
薬剤師のみなさんにもぜひ知ってもらい、患者さんの役にたてる面白さを感じてもらいたいと思い活動をしています。
患者さんを副作用から守るためには、患者さん
自身に副作用の症状を気づいてもらう事が必要です
佐藤先生: 医薬品の副作用について、添付文書では基本的に「臓器ごと」に分類して記載されていますよね。「副作用機序別分類」はこれを臓器別ではなく、副作用の「発生機序ごと」に分類して考えます。
機序別に分類することで、臓器別に羅列された従来のデータと比べて、副作用の発生予測や起きた時の対応がしやすくなることが特徴です。
これを活用することによって、様々な副作用に対する適切な服薬指導や、フォローアップが可能になります。例えばQOLを下げてしまう便秘やめまいなどの軽い症状から重大な副作用まで、服薬期間によって起きやすい副作用を予測し、事前に初期症状や対処法を伝えられるので、患者さんにも安心して服薬を継続してもらえるようになります。
どんぐり未来塾では、全薬剤の副作用を薬理作用、薬物毒性、薬物過敏症の3つの機序に分類し、一からデータベースを作成しました 。データは私たちスタッフが論文などを調べて作っていて、分類する時に判断のもとになった作用機序に加え、副作用発生時の対応方法も記載しています。
根拠をきちんと示すことで、薬剤師がしっかりと理解し納得できるような解説文となるように工夫しています。
佐藤先生: コロプロとは、個々の患者さんに対し、「今、起きる可能性のある副作用」を予測できる業務システムの作成を目 指すプロジェクトです。
一般的な服薬指導ですと、薬剤師から質問を投げかけるため、 どうしても薬剤師の想像や思い込みによって、特定の副作用症状を誘導したり、バイアスがかかる可能性があります。
佐藤先生: データを蓄積していくことで、患者さんの年齢、服薬期間、併用薬などによって、どんな副作用症状が起きやすいかを予測することが出来るようになります。そうすると薬剤師が事前に注意喚起し、患者さん自身に副作用の症状を気づいてもらうことができます。
また、副作用機序別分類のデータベースと組み合わせることで、対応方法をあらかじめ患者さんに伝えることができ、重症化の予防が可能になります。
課題点としては、データベースの件数がまだ少ないことが挙げられます。「薬剤師」の働きかけによって作り上げる「副作用チェックシステム」ですので、これからぜひ多くの薬剤師さんに協力いただき、データ量を充実させていきたいですね。
佐藤先生: 患者さんは常に「安全・安心」を求めていると思います。病気を早く治したいから薬を飲まなくてはいけないけど、でも、副作用が怖いという患者さんはたくさんいます。
副作用が気になるから、薬を飲まなかったという患者さんもいますよね。患者さんの不安を解消するために必要なことは、患者さんに副作用を正しく理解してもらうことではないでしょうか。
例えば、「薬理作用からくる副作用」であれば、薬が効いているからこそ起きるものなので、仕方がないけど、服薬を継続すれ ば身体が慣れてくる可能性もある事。「過敏症からくる副作用」の場合は、発生の確率は非常に低く、初期症状で気づいて中止すれば 重症化しない事など、副作用についてきちんと理解してもらうことが大切です。
私は、薬の作用機序も患者さんに説明することがあります。話をすると納得して薬を服用してもらえる場合が多いです。やはり自分の身体に起きる事なので、納得して服薬してもらいたいですし、そのために私たち薬剤師が正しい情報を患者さんにお伝えする必要があると思います。
患者さんとの信頼関係がなければ、
薬剤師の知識は宝の持ち腐れになってしまう
佐藤先生: はじめサービスの構想を聞いたときは、率直に嬉しかったですね。「薬の有害事象から患者さんを守る」というビジョンが、私達どんぐり未来塾の活動方針と似ていて、きっとコロプロの同志になれると思いました。
Sentryに私達のコンテンツを提供することで、きっと、薬剤師が実践的な医薬品情報を駆使し、患者さんに対して根拠をもった服薬指導ができるようになる、そのお手伝いができると思いました。
あと、Pharmarketさんが「薬剤師に対する世間の誤解を解きたい、正当な評価を得られる社会を目指したい」とおっしゃっていて、私もいち薬剤師として、とてもうれしかったです。
佐藤先生: そうですね。私も薬剤師さんから「患者さんが全然話を聞いてくれない」「何度も同じ話をさせるなと怒られた」といった悩 みをよく聞きます。
一方で患者さんからは「薬剤師さんはいつも忙しそうで話しかけづらい」「薬の説明だけしてくれる人だと思っていた」という声が聞かれます。
数年前から薬剤師の仕事が対物業務から対人業務にシフトされてきて、薬剤師も「薬物療法の専門家」になってきていますが、患者さんにはまだその認識が行き届いていないのではないでしょうか。
双方の誤解を解消するために、まずは、薬剤師が薬の効果や飲み方を説明してくれる人ではなく、「自分の健康について気軽に相談できる人」だと認知してもらうことが必要だと思います 。薬剤師がいくら立派な知識を持っていても、患者さんに伝えられなければ、それは自分でいうのもなんですが宝の持ち腐れになってしまいますよね。私はもっと、もっと、気軽に、薬剤師を活用してほしいと思っています。
まずは薬剤師の機能や役割をしっかり患者さんに知ってもらうこと、そしてその上でなんでも聞ける、話せる、そんな良好な信頼関係を築くこと、これがこれからの対人業務において最も大切だと思います。
佐藤先生: 実際にSentryを使ってみて、関係構築という点で、すごく使えるなあと感心してています。例えば問診表などで、「なぜこの質問をするのか」を患者さんに表示してくれるのはいいですよね。これをみれば患者さんも薬剤師の考えていることを知れて、質問に答えてあげよう、という気持ちになりますよね。
少しずつでも心を開いてもらえらば、いずれ直接だと話しにくいこと、伝え忘れていたことなども、いつでもスムーズに聞ける&話せるような関係が作れると思います。
「両者の手間を抑えつつ、気軽にコミュニケーションが取れる仕組み」という開発のアプローチは、臨床経験のある薬剤師が開発メンバーにいるPharmarketさんならではですよね。
あと、犬のキャラクターも親しみやすくてかわいいです(笑)。Sentryを通じて、コミュニケーションの活発化がおき、患者さんと今までよりも強固な信頼関係を築ける。それが、患者さんの「安心」に繋がると思います。
せっかく服薬フォローやるなら、
もっと患者さんの役に立ちたい
佐藤先生: 薬機法が改正になり、服薬期間中のフォローが義務化になりましたよね。ただこれはあくまでもこれまで薬剤師がやってきた内容の延長だと思っています。
患者さんからしても、薬を飲む前ではなく、飲んでいる間に、薬剤師が副作用の確認や服薬のサポートをしてくれるのはすごく心強いと思います。
ただ義務化されたことで、経営者は薬剤師にその時間を取らせないといけないし、薬剤師も必要な患者さんに連絡を取り、 薬歴に記載してきちんと追いかける労力がかかります。
でもせっかくやるならもっと患者さんの役に立ちたいじゃないですか。私は今こそ薬剤師の力を見せるチャンスだと思っています。Sentryアプリをきっかけに薬剤師を身近に感じてもらい、理解され、より一層存在意義が広まることを期待しています。
一緒に頑張っていきましょう!